Wormrot – “Hiss” (2022)

良盤

画像引用元:https://f4.bcbits.com/img/a1129311430_10.jpg

●作品情報:
形態:4th フルアルバム
レーベル:Earache Records
ジャンル:グラインドコア
トラックリスト
1.”The Darkest Burden”
2.”Broken Maze”
3.”Behind Closed Doors”
4.When Talking Fails, It’s Time for Violence!”
5.”Your Dystopian Hell”
6.”Unrecognizable”
7.”Hatred Transcending”
8.”Doomsayer”
9.”Pale Moonlight”
10.”Seizures”
11.”Voiceless Choir”
12.”Grieve”
13.”Sea of Disease”
14.”Noxious Cloud”
15.”Shattered Faith”
16.”Desolate Landscapes”
17.”Spiral Eyes”
18.”Vicious Circle”
19.”Weeping Willow”
20.”All Will Wither”
21.”Glass Shards”

●個人的お気に入り度:
神盤/名盤S/名盤/良盤S/良盤/並盤/並盤以下


前作同様、独自性のあるグラインドコア。

シンガポール出身、ヤギにも人気(?)のWormrotによる4thアルバム。

このアルバムは恐らく、
昨年のグラインドコアで一番話題になったんじゃないでしょうか。


彼らが注目を集め始めたのは、2016年の”Voices”から。
やけくそに突っ走るグラインドコアに、
ハードコアやブラックメタル、ポストブラックなどを加えたサウンドが話題を呼びました。
色んなジャンルとクロスオーバーしたグラインドコアという、
ありそうで無かったスタイルの前作は中々の充実作でした。

そんな前作から6年ぶりとなる、今作。
端的に言えば、
今作も前作同様のクロスオーバーをさせたグラインドコアが聴ける作品です。

ただ全く同じかと言うとそうではなく、前作からいくつか変化が見られます。


まず1つ目は、ポストブラック的な叙情性の増加。
前作でもポストブラック的なメロディは所々にあったものの、
今作ではその比率が若干増えたように思います。特にアルバムの後半に多いです。

また今作では、何とヴァイオリンが登場。
Napalm Deathが以前サックスを取り入れたアルバムを出していましたが、
ヴァイオリンもそれに劣らず面白い。
ただヴァイオリンがポストブラック的かというと、少し違うかもしれません。
実際、不協和音を奏でて不気味さを演出することもあります。
しかしヴァイオリンのお陰で叙情性・ドラマ性の向上にも一役買っている面もあると思います。

ヴァイオリンが特に目立っているのが、やはり最後の#21.”Glass Shards”
まさかグラインドコアでこんな感傷的な気分になろうとは。
これは正直予想外。


そして2点目。
今作では、前作よりも一層整合感のあるサウンドになっています。
前作は荒々しく暴れ散らかしながらも、
随所に他ジャンルの要素を散りばめるというそのバランスが絶妙でした。

しかし今作では前作のような粗削りさは無くなった上、
アルバム全体としての流れも一層整えられているように感じます。

#1~#8までの前半は比較的普通のグラインドコアらしく暴れ回り、
#9″Pale Moonlight”を境にポストブラック的な叙情性が増し、
(グラインドコアにしては)長尺の曲が増えてきます。

起承転結がよりはっきりしてきた、とも言えると思います。
しかしこのように洗練されてきたことには、賛否両論あるでしょう。
実際個人的には、
前作のような汚らしさがなくなってしまったのは少し寂しい。
とは言え、今作もグラインドコアの中では結構勢いのある方だとは思いますが。
ドラムの人凄いよね。ライブで再現出来るんでしょうか。


また前作のどこに一番惹かれたかで、今作の印象は少し変わってくるかもしれません。
その独自性あるサウンドが気に入ったなら、前作と同じかそれ以上に気に入るでしょう。
反対にグラインドコアらしい暴れっぷりに一番心を惹かれたのなら、
今作には若干の物足りなさを感じるかもしれません。

僕はどちらかと言うと前作の方が好きなんですが、
グラインドコアというジャンルの幅を一層広げる今作も面白くて結構好きですよ。

まとめ。

前作以上に、
「ただ暴れてるだけじゃない」という姿勢が強いアルバムです。
昨年広く話題になったのも、その点に依る所が大きいのでしょう。
評論家受けは今作の方が良さそうな気がします。

独自性のあるサウンドはもちろん面白いですが、
グラインドコアの部分もかなり勢いがあってしっかりしていますし、
良いアルバムだと思います。

実験的なグラインドコアだとAntigamaや最近のNapalm Deathが思い浮かびますが、
Wormrotもそこに加わってきましたね。
ただ願わくは、
煮詰めすぎてグラインドコア以外の変な方向に行ってしまいませんように…笑


・お薦めの曲
#2.”Broken Maze”
2分間という短い中に色々詰まっていて面白い曲です。
爆走パートも中々のもの。

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