メタルって、どんな音楽?~ポップスとの比較~

コラム

画像引用元:https://www.facebook.com/photo.php?fbid=800338924783347&set=pb.100044217410057.-2207520000.&type=3&locale=ja_JP


「ヘヴィメタルとはどんな音楽か?」
簡単なようで中々難しい質問です。


その上、ヘヴィメタルは実に多種多様なサウンドを包摂するジャンルではありますが、
全く知らない人からすると「何となくのイメージ」しか持たれていないのが実情です。

そこでこの記事では、
そんなヘヴィメタルの特徴を色んな側面から解説していきたいと思います。
そして一般的に親しまれているポップスと比較した方が分かりやすくなるかと思ったので、
「ポップスはこうだけど、メタルはこう」という形で進めていきます。

今回は、主な点を3つ!挙げています。
それでは早速。

「歌」か「曲」か?

ポップス:「歌」と呼ぶ →ボーカル重視 (ex.この「歌」いいよね!)
メタル:「曲」と呼ぶ  演奏(全体)重視 (ex.この「曲」最高。)

さて、こちらは何もヘヴィメタルに限らず、
クラシックやジャズなど他の音楽にも共通して言えることかもしれません。
しかしここから両者の色んな違いが浮き彫りになるので、まずはこの点に着目してみたいと思います。


ポップス好きな人は「歌」と言う反面、メタル好きな人は必ず「曲」と呼びます。

あくまでも自分の肌感覚ですが、ポップス好きな人と話したりネットの投稿を色々見ていると「歌」という言い方を多く目にする気がします。
対してメタルの場合、「歌」という表現はまずしません。「曲」です。
僕自身、メタルの楽曲を「歌」と言うのはかなり違和感があります。


一体なぜ、こんな違いが生まれるのか?
その原因は恐らく、「楽曲の中でどこを重視するか」の違いにあります。



ポップスの場合、楽曲でメインとなるのはやはりボーカルです。
当然ボーカル以外にもシンセサイザーなどの楽器隊はあるとは言え、
それらは基本的に「ボーカルを引き立たせる」役割を果たしています。

言い換えれば、
ポップスにおいてメロディの大部分はボーカルが担っており、
演奏陣はビートを添える等の機能を果たしています。



たとえば、2020年に世界的に大流行したBTSのDynamite
インスト版を聴いてみると、演奏陣はメインのメロディをほぼ担っていないことが分かります。
ボーカルがある方(MV)と聴き比べてみると、よく分かると思います。



それでは、メタルは?
ヘヴィメタルの場合はこれが逆転します。

そう、メタルでは演奏、特にギターが重視されます。
無論、ボーカルもしっかりとしたメロディを担うこともありますが、
ポップスとは違ってボーカルと演奏陣がそれぞれ独立したメロディを担うことが多いです。

言わば、
ポップスではボーカルが主役で、演奏陣はボーカルを支える。
メタルでは演奏陣(特にギター)が前面に出て、その中にボーカルが加わる。
と言った違い。


そのため、たとえばポップスの曲でカバー動画を検索するとボーカルのものがほとんどですが、
メタルの場合はギターが多く、次にドラム、といった違いも出てきます。

あるいは、
「こういう曲あった気がするけど、何だっけ?」と訊く時、
ポップスならボーカルのメロディを歌いますが、
メタルならギターのメロディを口ずさめば分かる、といった違いもあります。
(勿論、メタルもボーカルのメロディで訊くこともありますが)



ここまで読めば、もうお分かりですね?
そう、ポップスはボーカルを重視するから「歌」と言い、
メタルは演奏を重視するから「歌」とは言わずに「曲」と呼ぶ。
英語なら”song”で一括りでしょうが、日本語ならではの面白い使い分けですね。



ちなみに、
特にデスボイスを用いるデスメタルなどのジャンルでは、メロディを担うのは主にギターです。
ボーカルはメロディをなぞらず、楽曲の激しさを演出する一つの楽器としての機能を果たします。

これは結構重要なポイントです。
では、ここで一つ質問。
ああいう曲を嬉々として聴いている人たちは、一体曲のどこを聴いているんだと思いますか?

↓こういう曲。くぅぅ、堪らんね。


そう、ボーカルではなく、演奏を聴いているんですね。
よく「何を言ってるか全然分からん」という批判がありますが、
大丈夫です。僕も何を言ってるかさっぱり分かりません。
と言うかそもそも、聞き取ろうとしていないんです。

先に言った通り、
デスメタルなどの場合、ボーカルは楽曲の激しさを増すための楽器として機能するので、
正直どんな内容のことを言っていようがあまり関係ないんです。と言うかあんま歌詞見ないです。
リスナーは歌詞を聞き取ろうとしてないし、そもそもバンド側も聞き取らせる気はほぼ0です。


最初から結構長々と書いてしまいましたが、
要はポップスと比べてメタルは演奏を重視する音楽である、ということです。
他にも、ポップスよりも演奏重視のメタルは、歌い出しまでの時間が長いとか間奏が長いとか、
違いは多々あります。
ひょっとしたら、メタルに対する多くの疑問はこれで謎が解けるかも?

追求するものの違い

ポップス:多くの人に親しんでもらうことを追求する
メタル:激しさを追求する。また、自分達が納得できる音楽を追求する。



メタルと言えばやはり、「激しい音楽」と言うイメージが強いと思います。
そして実際、それは間違っていません。


“pop”という言葉の通り、
ポップスはやはり一人でも多くの人に受け容れられることを目的としています。
基本的にはシンプルで分かりやすさを重視したサウンドです。

対してヘヴィメタルはその歴史を辿ってみても、「激しさ」を常に追求してきた音楽です。
メタルには様々なサブジャンルが存在しますが、
時代を追うごとに一層過激なジャンルを生んでいます。
そしてやはりこの点が、多くの人がメタルに抵抗感を抱いてしまう最大の理由でしょう。


例として適切なのかは分かりませんが、
デスメタルよりも後に生まれたジャンルに「ブラックメタル」というものがあります。
それはこんな感じのサウンドです。



普段ポップスを聴く人からしたら、
「こんなの音楽じゃない!」と思ってしまうのも無理からぬことだと思います。僕は大好きだけど。


また「聴きやすさ」「親しみやすさ」などは基本的に度外視しているので、
「分かる奴には分かる、分からない奴は聴かなくていい」といった排他的・保守的な空気がメタルのコミュニティにはどうしても漂いがちです。

そしてこれに付随して、
メタルは大衆受けを狙うと言うよりは(そういうバンドも勿論いますが)、
「自分達が納得できる音楽を作る」という姿勢が強いように思います。職人気質と言うか。
ポップスにはそうした姿勢が無い、と言っている訳では決してありませんが、
あくまでも全体の傾向として、ポップスと比べればメタルは特に強いという意味です。
メタルのようにアンダーグラウンドな音楽にしばしば見られる傾向ですね。



しかし決して誤解して欲しくないのは、
デスメタルやブラックメタルはあくまでも「サブジャンルの内の1つ」であり、
もっと分かりやすくて親しみやすいメタルもある、ということです。

たとえば「パワーメタル」というジャンルは、
ポップスのようにしっかりと歌い上げるボーカルラインがありかつ日本人好みのメロディを多用するので、日本で特に人気の高いジャンルです。
よく「アニソンっぽい」と言われますね。



とは言いつつ、ポップスと比べればメタルはやはり激しい音楽です。
この激しさに慣れない内は中々良さが見えてこないでしょうが、
一旦慣れるともう元に戻れなくなるんですよね。そう、僕のように。

前から思っていたけど、メタルは蜘蛛の巣のようなものだと思うんです。
一度ハマってしまうともう抜け出せない。
どころか、糸がどんどん絡まっていくように増々求めるようになる。
メタルとはそんなものだと勝手に思ってます。メタルは裏切らない。



ちなみに、日本だとメタルはあまり人気がありませんが、
一転して北欧に目を向けると事情はかなり違うようです。
メタルバンドのアルバムが国内の総合チャートで1位に輝くこともあるくらい、
北欧ではメタルが国民的音楽として親しまれているそう。
文化の違いなんですかね。北欧に住みたい。
参考:
BATTLE BEAST 通算5作目となるニューアルバム! HMV
「世界一幸福な国」フィンランドにヘヴィ・メタル・バンドが多い理由 ZUU Online

歌詞の内容

ポップス:恋愛などの人間関係
メタル:宗教・神話、死、ファンタジー、社会・環境問題など

ポップスとメタルでは、歌詞の内容も大きく異なります。
(あくまでも、全体の傾向としての話になりますが)


ポップスはやはり、恋愛を中心とした人間関係が歌詞のテーマになることが多いですよね。
あるいはマイケルジャクソンやBTSなどのように、啓発的なメッセージ性のあるものもあります。

それに対してメタルはと言うと、
宗教や神話、ファンタジー、死、などが主なテーマとして扱われます。
メタル全体で一概に言う事は難しいですが、サブジャンル毎に歌詞の傾向が大方決まっているきらいがあります(パワーメタルならファンタジー、など)。


そして意外かもしませんが、
メタルでは昔から政治・社会問題や環境問題を取り扱った歌詞も多く見られます。

たとえば、アメリカのMegadeth
彼らは一貫して政治や戦争をテーマとした歌詞を書く”intellectual thrash metal”(知的なスラッシュメタル)を標榜していることで有名です。
そんな彼らが2007年に発表した11作目のアルバムのタイトルは、
“United Abominations”。(abomination = 「忌まわしきもの」 といった意味)
国連の活動への不満や苛立ちを歌詞にしたそうですが、うーん、中々痛烈です。


あるいは、メンバー全員がベジタリアンであることで有名なCattle Decapitation
彼らは動物虐待や環境破壊など、人間が引き起こす種々の問題に対する批判を加えます。

僕が特に好きな“Kingdom of Tyrants”という曲があるのですが、
この曲の歌詞は激烈なサウンドと相まって衝撃的です。※MVは少しグロテスクなので苦手な人はご注意!
劣悪な環境に置かれた家畜の視点からの歌詞なのですが、


“Here in the garden (この牧場で)
We know not what we do (僕達は自分が何をしてるのかも分からない)
Made to lie in pastures of filth (汚物に塗れた牧草地に横たえられ)
Left to die, guilty of nothing (放置されて死んでいく 何の罪もなく)
If we were promised heaven (天国を約束されているのなら)
Then why are we in hell?” (どうしていま地獄にいるの?)




いやあ強烈です。夢に出てきそう。


メタルでも恋愛などの人間関係をテーマとした曲もありますが、
全体の傾向としてはやはり上記のようなものが主たるものです。
まあ、そもそもメタル好きはあまり歌詞を見ないという傾向がありますが…僕もそんなに見る方じゃないです


・ちなみに。
※読み飛ばして頂いて結構です。僕が鼻息を荒くして熱く語っているだけです
メタルでも恋愛がテーマになることがある、と先に書きましたが、
その中でも特に僕のお気に入りなのがOpethというバンドの“Still Life”というアルバム。
この作品はアルバム全体が一つの物語になっています。
テーマは信仰と愛

今は修道女となったかつての恋人(Melinda)を忘れられずに、男は彼女と15年ぶりの再会を果たす。
男は無神論者だった。異端者として村の教会から追放されているため、密会が村の者に明るみになったら二人共ども命が危ない。
男は彼女に、一緒に村から逃れるよう説得するが、神に誓ってそれは出来ないと拒む。
しかしふとした瞬間、本当の想いが彼女の口からこぼれてしまう。
彼女は自分で言ったその言葉に動揺してしまう。
これが”Face of Melinda”という曲の場面なのですが、その歌詞がこちら。

But baffled herself with the final line (最後に口にした言葉に、彼女は自ら当惑する)
My promise is made but my heart is thine (「神との誓いは立てたけど、私の心は貴方のもの」)

はあ…何と…何という美しさ。
ヘヴィメタルがこれ程に芸術的な美を生み出せるとは…
はい。ちょっとつい興奮してしまいましたが、
こういう詩的で美意識の光るメタルもあるという事を最後に紹介したかったんです、はい。


まとめ。

さて、
これで何となくでも、「メタルとはどんな音楽か」分かって頂けたでしょうか?正直そんなに自信ない。

僕は普段からメタルにどっぷり浸かっている人間なので、
逆に当たり前すぎて見落としている点もあるかもしれません。
色々新たな気付きがあったら、その都度加筆修正して改善していきたいと思います。

そしてこの記事を「へぇ、知らなかった」と面白く読んで頂けたら嬉しいし、
あわよくばメタルという音楽に興味を示して頂けたら(!)もっともっと嬉しいです。

それでは!

コメント

タイトルとURLをコピーしました