Svalbard – “The Weight of the Mask” (2023)

良盤S

画像引用元:https://svalbard.bandcamp.com/album/the-weight-of-the-mask

●作品情報:
形態:4th フルアルバム
レーベル:Nuclear Blast
ジャンル:ポストハードコア
トラックリスト
1.”Faking It”
2.”Eternal Spirits”
3.”Defiance”
4.”November”
5.”Lights Out”
6.”How to Swim Down”
7.”Be My Tomb”
8.”Pillar in the Sand”
9.”To Wilt Beneath the Weight”

●個人的お気に入り度:
神盤/名盤S/名盤/良盤S/良盤/並盤/並盤以下


繊細な音色で心の苦しみに寄り添う作品。

これは去年特に多くの注目を集めたリリースでしょう。
去年のMVPとして今作を挙げている人も見かけましたし、それも納得の非常に優れた作品です。

ジャンルはハードコアのようだけれども、音の質感はポストブラックメタルに近いです。
実際後者のリスナーの方が好きそうな音なので、「ポストブラック/ポストメタル」とした方がむしろ適切かもしれません。

まず音の特徴は、ハードコア的な咆哮と疾走はそのままに、ポストブラック的な繊細かつ扇情的なリフを奏で、ふとした瞬間にこれまた繊細で透き通るようなクリーンVoが現れる、といったスタイル。
個性的と言うには充分過ぎるでしょう。楽曲の練度も非常に高いです。

ハードコア的な咆哮は怒りというよりも、内側に抱える苦しみを吐露するよう。
実際、歌詞も内面の苦悩や葛藤をテーマとしています。
たとえばアルバム名の”The Weight of the Mask”は#5″Lights Out”の歌詞から取ったのだと思いますが、この曲は「内面(心)は酷く傷付いているのにそれを外側(表情)に表すことが出来ない」という、今にも押し潰されそうな心の苦しみを歌っています。

そしてギターやクリーンVoの奏でる優しい音色は、同じくその苦しみの発露のようでもあるし、苦しみを癒すもののようにも聞こえます。
特にクリーンVoが現れる場面は、暗闇の中にいる自分に手を差し伸べて光の下へと引き上げてくれるかのよう。
何と言うか、音色が非常に「女性的」なんですよね。クリーンVoに限らずギターの音もそうだけど、包容力があるというか、包み込むような優しさがあるような気がします。

もしかしたら、本当に苦しんでいる人にとって今作は「救済」となるのかもしれません。
僕は今のところ特段問題なく毎日過ごしていますが、いつか本当に辛くなった時に聴いたら、きっと胸を打つものがあるのでしょうね。


まとめ。

何回も聴いています。
ひょっとしたら普段メタルを聴かない人にもお薦め出来る音かもしれない。

全くスタイルは異なるけれど、僕は今作を聴いてKatatoniaを連想しました。
Katatoniaのメンバーが「自分達の音楽が慰めになる人もいるだろう」と語っていたそうですが、慰めになるという点では今作も同じでしょう。どちらも、内面の苦しみに徹底的に寄り添っています。
しかし、Katatiniaがひたすら闇に留まりながら寄り添う一方、Svalbardはその闇から光へと導いている。内面へ寄り添っていながら、真逆のアプローチをしているのではないか。
そんなことを、聴いていてふと思いました。



・お薦めの曲
5.”Defiance”
今作の中でも特に印象的な曲の1つ。
轟音の最中に差し込む透き通った声が、眩しい。

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