Saturnus – “The Storm Within” (2023)

名盤

画像引用元:https://saturnus-official.bandcamp.com/album/the-storm-within

●作品情報:
形態:5th フルアルバム
レーベル:Prophecy Productions
ジャンル:ドゥームメタル
トラックリスト
1.”The Storm Within”
2.”Chasing Ghosts”
3.”The Calling”
4.”Even Tide”
5.”Closing the Circle”
6.”Breathe New Life”
7.”Truth”

●個人的お気に入り度:
神盤/名盤S/名盤/良盤S/良盤/並盤/並盤以下


耽美さという点では今年随一の傑作。

今年はドゥーム系が豊作だった気がしますが、その中でも特に際立っていた作品の1つがこれ。
デンマーク出身のバンドによる実に11年ぶりのアルバム、だそうです。


さてこのアルバム、実を言うと作曲に洗練されていない所があるのが否めないんです。
具体的には、曲の構成ですね。単調な繰り返しが多く、正直冗長とすら言える面もあります。
(曲構成に関してはBell Witchの方が遥かに巧みだと思います)

にもかかわらず今作を名盤とした所以は、この深く耽美な世界観。
もっと高度に練られたドゥーム系のアルバムは多々あれど、これ程濃厚でディープな世界観を演出する作品は滅多にないでしょう。
耽美さという点では、Bell Witchの新譜さえ凌駕していると思います。



調べた限り、彼らは単にドゥームメタルと分類されることが多いようですが、
少なくとも今作に関してはゴシックメタル的な美意識も持ち合わせているように感じます。「ゴシック・ドゥーム」がしっくり来ますかね。
特にそう感じさせるのは、リードギターが奏でるメロディ。
#1″The Storm Within”の3:40~のギターのように、ゴシック的な耽美さと悲哀を兼ね備えた旋律は聴く者の耳に強く残ります。



そして全体としての雰囲気・世界観は、”The Storm Within”という名前が示す通りのもの。
さながら、嵐の中に身を置いているかのよう。
しかし激しい風雨に曝されながらも、頭上を仰ぐと澄んだ星空が煌めいている。
そんな情景が心に浮かびます。

アルバム全体を貫く世界観はこの通りなのですが、
個人的にはアルバムの中で雰囲気を微妙に変化させているように思います。
一層主観的な感覚なので人によってはそう聴こえないかもしれませんが、
#4″Even Tide”を境に激しかった嵐が徐々に落ち着きを見せ、最後の#7″Truth”の終盤ではただ澄み渡った星空だけが広がっている…そんな印象を受けました。
もしこれを本当に意図して作曲しているなら、恐ろしく繊細な表現力だと思います。

そうでないにしても、アルバムの後半にかけてリードギターの旋律から悲哀の感情が次第に薄れていき、段々と希望が兆してくるような感覚を覚えるのは、確かではないでしょうか。
少なくとも僕は、耽美さだけでなくドラマ性も持ち合わせた優れた作品だなあ、と思っています。


まとめ。

曲構成に甘さがあるのは否めないですが、
それを補って余りあるほどの実に美しい世界観を備えた作品です。
傑作だと思います。どちらかと言うとゴシック系が好きな人に刺さるかもしれませんね。



・お薦めの曲
7.”Truth”
1:18~からのアコギは、あまりの美しさにため息が出てしまう。
4:50~のリードギターも言わずもがな。有終の美を飾ります。

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