Metallica – “Master of Puppets” (1986)

良盤

画像引用元:https://cdn.media.amplience.net/i/metallica/master-of-puppets_cover

●作品情報:
形態:3rd フルアルバム
レーベル:Elektra Records
ジャンル:スラッシュメタル
トラックリスト
1.”Battery”
2.”Master of Puppets”
3.”The Thing That Should Not Be”
4.”Welcome Home (Sanitarium)”
5.”Disposable Heroes”
6.”Leper Messiah”
7.”Orion”
8.”Damage, Inc.”

●個人的お気に入り度:
神盤/名盤S/名盤/良盤S/良盤/並盤/並盤以下


歴史的名盤と名高い、けど。

「ヘヴィメタルの名盤」と言ったら真っ先に名が挙がるアルバムでしょう。
最早伝説と化しており、多くのファンが「この3rdこそメタリカの最高傑作」と称える作品です。
後続のバンドへの影響も相当なものだったはずで、メタルを知らなくともこのジャケットには見覚えがある、という人がいてもおかしくありません。

だから、とてつもなく凄い作品。
のはず、なんですが…
いや、好きな人には本当に申し訳ないんですが、
正直「え、そこまで凄いかな?これ」って思っちゃうんです。僕は。
確かに良いアルバムだとは思うし好きではあります。
かと言って歴史的名盤かと言うと、そこまででは無いんじゃないかなあと。

アルバムとしてのバランスが…

その理由はずばり、「良い曲と微妙な曲との差が激し過ぎる」と思うから。
なのでアルバム全体として見た時に、それってどうなの?って思ってしまうんですよね。


まず僕が本作で好きな曲は3つ。
#1 “Battery”#2 “Master of Puppets”は当然として、
#4 “Welcome Home (Sanitarium)”もその2曲に勝るとも劣らない名曲だと思います。
そして次点で#5 “Disposable Heroes” って感じですかね。


“Battery”と”Master of Puppets”の冒頭2曲は本当に素晴らしい。
正に歴史的名曲でしょう。その点には全く異論ありません。

大傑作の予感を抱かせる見事な流れです。
― そう、この2曲までは。


問題はこれ以降。
興奮が最高潮に達した所でおもむろに始まる、#3.”The Thing That Should Not Be”

いや、好きな人には本当に申し訳ない。
でも、あれだけ最高の流れだったのにいきなり「ボロン…」って芋臭いリフがぬるっと出てくるもんだから、もう僕毎回ずっこけてます。ここで。ええ。
「え、えぇー!!!この流れで何でこんな微妙な… え、えぇ…
って1人で一昔前のギャグ漫画みたいに頭からずっこけてます(それは言い過ぎだけど)

ま、まぁイントロがちょっと微妙なだけかな…?と思いつつ一応最後まで聴いてみるものの、
やっぱり最後まで面白くない。
う、うーん、これは正直… 最初の2曲がずば抜けた名曲なだけに余計に落差が目立つ気がします。


しかしその後の#4 “Welcome Home (Sanitarium)”で息を吹き返すので少し安心。
申し訳ないですが僕、もう#3は最後まで聴いてられないので、最近は飛ばしてすぐ#4に行ってます。
#1→#2→#4の流れの方が傑作感が出る気がするから。

続く#5 “Disposable Heroes”も中々格好いい。
でもこれ、8分もいる曲だったかな?5分くらいにまとめても良かった気が。
#6 “Leper Messiah”は正直、そこまで好きではないです。
後半は割と格好いいと思いますが。その点#3よりは気に入っています。


その後の#7 “Orion”#8 “Damage, Inc.”は悪い曲では無いと思います。
前回の2ndの記事で「Orionは冗長だ」みたいな事を言いましたが、
すみません、その点については撤回します。でも傑作とまでは正直思えません。
#8 “Damage, Inc.”も然り、印象的なリフもあるけど名曲かと言われるとそこまでかなぁ…


楽曲の個性の付け方やキャッチーさという点では、前作を優に上回っているでしょう。
曲単位で見れば、今作の方が一層洗練された曲もあります。
でもやはり、アルバム全体として見るとどうしても…煮え切らなさが残ってしまうんですよね。

Cliffは「伝説のベーシスト」か?

ベーシスト故Cliff Burtonの貢献が大きい今作は、当時としては非常に革新的だったのでしょう。
実際、”Master of Puppets”という名曲を生んだのは確かに偉大でした。
彼がいなければ、大作志向で構成美を意識し、かつ哀愁が漂い叙情的という
「単に激しいだけじゃない」姿勢は恐らく生まれませんでした。


“Master of Puppets”については百歩譲るとしましょう。
しかしその他の点に目を向けてみると、
果たして本当に「伝説のベーシスト」として崇められるほどなのでしょうか?
技術的には確かに凄いのかもしれません。
ですが曲としての面白味という点については疑問の余地があると思います。

曲構成がそこまで秀逸かと言うと、少々背伸びしている感があるのも否めないし、
また叙情性という点も板に付いていないというか、こなれていない部分がある気がしてしまう。
プログレッシブさと叙情性に関しては正直、Megadethの方が何枚も上手だったと思います。


Cliffは今作のリリース後に不慮の事故で夭折したこともあり、余計に「伝説」として語られるようになったのでしょう。
しかし今になって冷静に聴いてみると、その評価は本当に妥当なのか。
考えさせられるものがあります。少なくとも、僕にとっては。


Cliffの死後もなお彼の影から逃れられず、
大作志向に執着して迷走の兆しが見えていたのがこの後の4th “…And Justice for All”。
そして彼の作曲スタイルに固執することを止め、
Metallica本来の持ち味を存分に活かした傑作こそが5th “Metallica”
だと思っていますが、その話はまた別の記事で改めてすることにしましょう。

まとめ。

誤解の無いように言っておくと、僕は今作結構好きです。
まあ、愛のある批判ってやつです。
前回2ndの方が好きとはっきり書きましたが、改めて聴き込んでみるとそうとも言い切れない。
ただ、アルバムとしてのクオリティは2ndが上という点は変わりません。


そして何より、僕自身を含め多くの人をメタルの世界へ誘うきっかけとなる作品が今作だと思います。
そういう意味では確かに「名盤」なのかもしれません。

いずれにしろ、後世まで語り継がれる作品であることには違いないでしょう。




・お薦めの曲
1.”Battery”
あえて裏をかくのもありかなと思ったものの、やっぱりここは王道を。
僕のヘヴィメタルとの初めての出会いがこの曲でした。
当時中学生だった僕は正直何が何だか良く分かっていなかったと思いますが、
とにかく「格好いい!!」と心を震わせたことは覚えています。
時代を超えた名曲です。

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