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●作品情報:
・形態:4th フルアルバム
・レーベル:Century Media
・ジャンル:デスコア
・トラックリスト:
1.”Welcome Back, O’ Sleeping Dreamer”
2.”Into the Earth”
3.”Sun//Eater”
4.”Cursed to Die”
5.”Soulless Existence”
6.”Apetheosis”
7.”Wrath”
8.”Pain Remains I: Dancing Like Flames”
9.”Pain Remains II: After All I’ve Done, I’ll Disappear”
10.”Pain Remains III: In a Sea of Fire”
●個人的お気に入り度:
神盤/名盤S/名盤/良盤S/良盤/並盤/並盤以下
2022年、多くのリスナーを震撼させたリリース。
1つ目の記事は、恐らく去年最も多くの人に衝撃を与えたであろうこのアルバム。
今更感が凄いけども。
まあこれは相当話題になりましたね。
色んな方のブログとかSNSを見ていても絶賛の嵐って感じでした。
今作の魅力については既に色んな方が語っていると思いますが、
僕は今作の良さは大きく2点あると思っています。
1つ目は、やはりサウンドの圧倒的破壊力。
この余りにも激烈なデスコアサウンドと荘厳なシンフォニーが結び付いた今作は、
多くの人に弩級の衝撃を与えたことでしょう。
Will Ramosのボーカルも無論強烈だけど、それに劣らず演奏陣も凄まじい。
どうやったらこんな迫力ある音を出せるんだ…?
しかしそれ程ヘヴィなサウンドながら、
アルバム通して聴いていても「重すぎてこれ以上はちょっと無理…」となることが不思議と無い。
その辺りのバランス感覚みたいなものも絶妙だと思います。
実はコンセプトアルバム。
こうした激烈なサウンドには確かに目を見張るものがあります。
しかしながら、
そうした激烈さだけでは、今作の魅力を説明するのに充分ではないと思います。
過激なサウンドはあくまでも「手段」に過ぎません。
ここで、魅力の2点目。それは「表現力の高さ」です。
今作には、そうしたサウンドを手段として表現しようとしているものがあるのです。
実は、今作はコンセプトアルバム。
歌詞を読み解いていくと分かるのですが、今作はアルバム全体で一つの物語になっています。
今作のコンセプトを一言で表すなら、「夢」。
1人の人間が虚しさを満たそうと没入する夢の世界での物語を描いています。
以下、簡単なあらすじ。
語り手である人物が、現実世界の虚しさを埋めるために夢の世界へと逃避する。
(#1″Welcome Back, O’ Sleeping Dreamer”)
次第にその夢が明晰になり、神の如く思うがままに世界を創り上げられるようになる。
(#2″Into the Earth”, #3″Sun//Eater”)
そして夢の世界で自分以外の住人も創り上げ、心の虚しさを埋めようとするものの、
「本当にこれでいいのか?」と自問し始める。(#4″Cursed to Die”)
やがて自分が今まで創り上げてきた世界が全く無意味であることに気付き(#5″Soulless Existence”)、
憤怒に駆られ、すべてを破壊し尽くそうとする。(#7″Wrath”)
しかしそんな中、遥か彼方に「何か」が現れる。
それが何なのかは分からない。しかし語り手は、それに一筋の希望を見出す。(#6″Apotheosis”)
そして「それ」は、1人の人間だった。
2人は互いに愛し合い、語り手は夢の世界に再び意味を見出すものの、完全な慰めを得るには至らない。(#8.”Pain Remains I: Dancing Like Flames”)
やがて語り手はこの夢の世界の終焉が近づいてきた事を悟る。
すべては風にたゆたう亡霊の如く、やがては跡形もなく消え去るものでしかなかった。
終わり行く夢の世界から去ろうとする。
(#9″Pain Remains II: After All I’ve Done, I’ll Disappear”)
語り手は絶望の淵にあった。
今まで創り上げてきた世界をすべて燃やし尽くしてしまう。
結局、心の虚しさは満たされることがなく、失意と悲しみと共に現実へと戻る。
(#10.”Pain Remains III: In a Sea of Fire”)
そして未だ得られぬ安らぎを求めて、再び新たな夢の世界へと入っていく。
(#1″Welcome Back, O’ Sleeping Dreamer”へ戻る)
※参考元:
https://music.apple.com/us/album/pain-remains/1632525748
https://wallofsoundau.com/2022/10/13/virtual-hangs-will-ramos-of-lorna-shore-interview-2022/
このコンセプトを把握した上で改めて聴いてみると、
この破壊的なサウンドが、満たされない空しさややるせない悲しみとして聴こえてこないでしょうか。
その感情が根底にありつつ、
曲ごとに悲哀・歓喜・憤怒・絶望など、様々な表情を見せているように感じられます。
コンセプトを踏まえると、荘厳なシンフォニーも単なる味付けではなく、
「夢の世界での神」の表現としてちゃんと意味を持たせたものなのではないでしょうか。
まあ、元々シンフォニーを使うバンドではありましたけど。
またアルバムの構成も中々考えられていると思います。
#1と#2でまず聴き手を圧倒させ、
#3以降でメロディの比重を次第に増やしていき、聴き手の意識をそちらへ持っていく。
これは巧い。
個人的には特に、
#8.”Pain Remains I: Dancing Like Flames”の非常に繊細な表現力には驚かされました。
一見すると喜びに満ちた音ながら、そこに深い悲しみとやるせなさが同居しているように思います。
とは言え、
コンセプトアルバムとしてのクオリティそのもので見れば、
他のジャンルでもっと優れたものは存在するでしょう。
しかしこのアルバムの画期的な点は、デスコアというジャンルでそれをやってのけたこと。
そういう意味では、
今作はデスコアの新たな可能性を切り拓いたのかもしれません。
・ちなみに:アートワークにも意味があるようです。
良いアルバムだと思う!ただ、、、
ここまで今作の良い点をずっと述べてきましたが、
最後に少し不満に感じた点も述べたいと思います。
確かに今作の激烈なサウンドは素晴らしい。
ただ、
激重のブレイクダウンや爆発的な突進力などには圧倒されるものの、
リフや曲の展開そのものに瞠目させられるかと言うと、いささか疑問に思ってしまいます。
こればっかりは感性の問題なので個人差はあるでしょう。
しかし個人的には、
今作を象徴する決定的なリフとか、巧みな曲構成が感じられれば文句なしの名盤でした。
中盤になると若干だれ気味になってしまうのも、惜しまれる点です。
あるいは単に僕の「名盤」のハードルが普通より高いだけかも。
まあ、
そんなことが気にならない位この激烈な音が好きなんだ!と言われればそれまでですが…
まとめ。
大きく話題になったのも頷けるアルバムです。
しかし個人的には、このサウンドにはまだ進化の余地があると思います。
上で指摘したように決定的なリフと巧みな曲構成を兼ね備えるようになれば、
今よりもっと優れたアルバムになるでしょう。
今後どうなっていくかが楽しみです!
あとは来日をぜひして欲しいですね。圧倒的パワーをぜひとも生で体感したいものです。
それでは長くなりましたが、最初の記事はここまで!
・お薦めの曲
#8.”Pain Remains I: Dancing Like Flames”
1曲薦めるとしたら、やっぱりこの曲かな。
“Pain Remains” 3部作通しで聴くと更に良いです。
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