Kreator – “Hate Über Alles” (2022)

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前作”Gods of Violence”から5年ぶりの新譜。

ドイツのベテランスラッシュメタルバンドによる、5年ぶりの新作。
てか5年ぶりなんですね、もうそんな経ってたっけ…？


2022年のスラッシュメタルと言ったら、
KreatorとMegadethの新譜が特に話題になっていた気がします。
Destructionも注目されていましたかね。

このKreatorの新譜は、個人的には結構期待していました。
何せスラッシュメタルのベテラン勢で近年一番勢いあるのは彼らだと思ってますし、
前作”Gods of Violence”も中々の快作だったので。

実際、先に聴いたタイトル曲の#2″Hate Über Alles”が素晴らしかったので、
期待に胸を膨らませつつアルバムを聴いた訳ですが…

良作ではある！ けど、もっとスラッシュメタルして欲しかった

結論から言うと、今作も良いアルバムであることには違いありません。
ですが個人的には、
「もっとスラッシュメタルしてくれればなあ」と消化不良にも感じた作品でした。


まず今作のサウンドは、前作”Gods of Violence”と同系統のスタイルです。
つまり、
パワーメタル然としたメロディセンスをスラッシュメタルに当てはめたサウンド。
ただ今作では、前作よりもメロディックさは幾分か控え目です。
クサクサのパワーメタルと言うよりは、正統派パワーメタル的な趣が強いかもしれません。

メロディックさは減退したとは言え、
エクストリームメタル特有の殺伐とした雰囲気はほぼ無いので、やはり非常に聴きやすい。
ミドルテンポの曲も多いので、メタルを聴き始めの人にもかなり薦めやすいと思います。


しかしながら、
僕がもどかしさを感じてしまったのは正にそのミドルテンポの曲が多いという点。

表題曲の#2や#3のように純粋なスラッシュメタルをやっている曲に関しては、
やはり流石としか言いようがないです。
スラッシュメタルは速くてなんぼだと思っている僕にとっては、
これ程の勢いで疾走してくれる曲はもう堪らない。ありがとうございます。

ただ、それ以降もそういう曲を期待してアルバムを聴いてしまうと、
僕のように煮え切らなさを感じてしまうかもしれません。
全曲疾走してくれとまでは言わないけど、
もうちょっと速い曲があっても良かったんじゃないかなぁ。

ミドルテンポの曲も1曲1曲は普通に良いんだけれど、
そういう曲が多いせいかアルバム全体としては些か締まりの無さを感じてしまいます。

そう、ミドルテンポの曲も単体で聴けば悪くないんです。
ただ1曲だけ少し文句を言わせてもらうなら、8曲目の“Midnight Sun”！君だよ君！
このイントロの高速リフはどう考えても疾走する前振りでしょ！？笑
普通このリフでミドルテンポにするかね！？せっかく爆走スラッシュを期待してたのに…


後半は少し不満を書き連ねてしまったものの、決して悪い作品ではないと思います。
これだけキャッチ―な音を出せるスラッシュメタルバンドも他に中々ないでしょうし、
安定した質の高さが窺えることは確かです。
ただ、傑作とまで言えるかというと…個人的には首肯し難いものがありました。

まとめ。

今作はひょっとすると、「何を期待するか」で印象が大分変ってくるのかもしれません。
タイトル曲のようなゴリゴリのスラッシュメタルを期待して聴くと、
少々肩透かしを食らってしまうでしょう。
しかし「聴きやすいヘヴィメタル」を求めて聴くならば、打ってつけのアルバムだと思います。

それこそ「Metallicaは好きだけど、Slayerはまだちょっと激しくて苦手」といった、
メタルを聴き始めの人に薦められるアルバムではないでしょうか。

またKreatorは音楽性を色々模索していくバンドなので、
今作ももしかしたら、別の音楽性へと羽化する途中にある作品なのかもしれません。
個人的には次回作はまた違う方向性で来るんじゃないかと思ってますが、
果たしてどうなるか。
今後も注視していきたいと思います。

・お薦めの曲
#2.”Hate Über Alles”
これですよこれ！やっぱりスラッシュメタルはこうでなくちゃ。
ここから間髪入れずに疾走曲#3″Killer of Jesus”へ持っていく流れも素晴らしい。
ちなみに”hate über alles”とは英語で”hate about everything”といった意味なんだとか。