Bell Witch – “Future’s Shadow Part 1: The Clandestine Gate” (2023)

名盤

画像引用元:https://f4.bcbits.com/img/a0239684796_10.jpg

●作品情報:
形態:5th フルアルバム
レーベル:Profound Lore
ジャンル:ドゥームメタル
トラックリスト
1.”The Clandestine Gate”

●個人的お気に入り度:
神盤/名盤S/名盤/良盤S/良盤/並盤/並盤以下


今年の上半期一番の傑作。

アメリカ・シアトル出身のドゥームメタルバンドによる5枚目のアルバム。


今年の上半期で一番のアルバムかもしれません。
間違いなく傑作です。もっと早く聴いておけば…


トラックリストから察しの通り、今作は1曲のみで1時間23分という超大作。
そしてとっつきにくい印象のあるドゥームメタルの中でも一番敬遠されがちな、フューネラルドゥーム系のサウンドです。
なのでまず、聴く意欲自体が湧いてこない人も少なくないでしょう。

しかしながら今作は、同ジャンル内では相対的に見て非常に聴きやすい。
腰を据えて聴くことを要求される作品には違いありませんが、普段この手のジャンルに馴染みが無い人こそぜひ聴いてもらいたいです。


全体を通しての特徴

まず今作は、”Future’s Shadow”という3部作の内の第1部という位置づけです。
歌詞にざっと目を通す限り明確なストーリーがある訳では無さそうですが、
どうやら3作目の最後が1作目の最初に繋がるように、つまり果てしなくループするように構想が練られているようです。

さて、そんな3部作の最初を飾る本作。
全体を通しての特徴(ないし今作が比較的聴きやすいフューネラルドゥームである理由)は大きく3つ挙げられます。

まず一つは、宇宙のような広大さ
今作は時間や空間の広大さないし無限のサイクル(永劫回帰)がテーマのようですが、
それを表すかの如く一つ一つの音がどこまでも引き延ばされる上、同じパートが何度も繰り返し演奏されます。
そのため、宇宙のような無限の広がりを感じさせるサウンドです。

フューネラルドゥームと言えば普通は徹底的に暗く絶望的なサウンドであり、
そこが聴きにくさを感じさせる大きな要因でしょう。
ですが今作にはそうした空気は漂っていません。
決して明るい訳では無く、かと言って鬱屈としている訳でも無い。
広々としたサウンドが、そうした微妙な感情を引き出してきます。


第二に、見事な構成力。
個々の音を引き延ばして繰り返し演奏するとは言え、そこに冗長さは皆無。
最初に聴く前は途中に休憩を挟むつもりだったのですが、結果的にその必要は全くありませんでした。
80分を超える大曲を苦も無く通しで聴かせてしまう、この作曲術。思わず舌を巻きます。


そして最後に、美旋律。
曲の8割ほどは前述のように広がりのあるサウンドですが、そんな中でふと、澄んだ旋律が立ち現れてくる。
キャッチ―ではないものの、注意深く聴けばその美しさに気が付くはず。
そして気付けば、魅了されているんです。


パートごとの簡単な解説

以上、全体を通してこんな感じではあるものの、
最後によりイメージを掴みやすくするために曲を複数のパートに大別して簡単な説明を加えたいと思います。


大雑把に分けると、今作は5つのパートから成っています。

・第1部 0:00~8:32
イントロ。穏やかなオルガンの音色が壮大な旅路の予感を抱かせる。
このイントロの時点で8分もあるので、ここでもう心が折れてしまう人もいるかもしれない。

・第2部 8:32~24:04
長大なイントロを経て、バンドの演奏がようやく幕を開ける。
前述の通り宇宙的な広がりを感じさせるサウンド。このパートではクリーンVoのみが登場する。
そして13分始め頃から何回か、控え目だが美しい旋律をギターが奏でる。
まるで広大な空間に咲く、一輪の花のよう。

・第3部 24:04~1:00:00
ここで分かりやすく演奏が切り替わり、静謐なアルペジオがしばらく爪弾かれる。
その後再びバンドの演奏が始まるが、今度は少し不穏な空気。ボーカルもグロウルに切り替わる。
しかし絶望感に溢れている訳では無く、何とも言えないもやもやとした感情を心に抱かせる。だがどこか心地が良い。
そして56:54~、クライマックスへと畳み掛ける。
テンポを上げ、美旋律が咲き乱れる。カタルシスを覚える。

・第4部 1:00:00~1:16:30
ここで何と最初のオルガンのイントロへ戻る。しかしメロディが若干異なる。
イントロの半分ほどの時間でバンドの演奏に変わり、美旋律を交えながら終わりへと向かう。

・第5部 1:16:30~1:23:15
アウトロ。
クリーンギターがもの寂しげにぽつりぽつりと音を奏でる。
ドラマティックな旅を経た後に、精神を鎮めて落ち着けるかのよう。

まとめ。

特に日本ではドゥームメタル自体あまり人気がないので、そこまで話題になってはいないようですが、これを見過ごすのは大変勿体ないと思います。
今年はドゥーム界隈が活発な印象ですが、今作はその筆頭でしょう。
第2部・第3部も非常に楽しみです。



お薦めの曲と言っても一曲しかないので、公式のストリーミングを貼っておきます。

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