●どんな作品?
・京の変幻自在なボーカル
・シンプルな演奏にもかかわらず、プログレッシブで変態的
・東洋的な情緒を漂わせつつ、薄気味悪い雰囲気が支配する
世界に誇れる変態音楽。
※以前、特定のジャンルに沿って記事を書いていきたいと言っていましたが、やっぱりやめました。ころころと方針を変える
その時その時で「あ、これ記事にしたい」と思ったのを上げていきます。
最近リピートしてるのが、これ。
日本のV系バンドの、2008年発表のアルバム。もう今から15年以上前なんですね。
海外での評価も高く、Dream TheaterのMike Portnoyもお気に入りとして挙げていたとか。
DIR EN GREY。
メタル好きだと名前は聞いたことあっても、「V系」のイメージから何となく避けている人が少なくないんじゃないでしょうか。
僕自身この”UROBOROS”を聴くまでは、そうでした。
でもそうやって何となーく敬遠している人にこそ、ぜひこのアルバムをお薦めしたいんです。
まず、イントロの#1″SA BIR”を経て最初に迎えるのは9分の大曲#2″VINUSHKA”。
この曲がもう、本当に衝撃的。とりあえずこの曲から聴いてみて欲しい。
4:20~からの爆発的なデスメタルパートは本当に、何度聴いても鳥肌。
自然な曲構成、静と動との見事な対比、V系の香りのする独特なメロディセンス、そして東洋的で美しくも不気味な雰囲気。
オープナーにして、このアルバムの全てが凝縮された至高の一曲。
最早いきなりクライマックスだけれども、それ以降も勢いが削がれることはありません。
僕が思う今作の魅力は、大きく3つです。
まず1つは、当然ながら京のボーカル。
これ程多種多様な音色を1つの喉から出せる人は、世界中どこを探しても他にいないでしょう。
彼の声1つで楽曲をぐいぐい引っ張っていくその様は、見事。
たとえば演奏はそのままなのに、彼がクリーンVoから素っ頓狂な奇声に切り替えるだけで曲の表情がガラリと変わる。誰にでも出来る芸当じゃないでしょう。
もう1つは、演奏技術が決して高度ではないにもかかわらず、変態性を醸し出している点。
#2″VINUSHKA”を始め、今作にはプログレッシブな作曲が随所に見られます。
一般的に「プログレッシブ・メタル/デスメタル」と言うと、曲構成のみならず演奏も複雑で高度である印象が強い気がします。
Dream Theater然り、Opeth然り。
僕はプログレメタル/デスメタルが好物なので、余計にそういう先入観を持っていたんですが、
DIRはそうではなかった。
決して下手という訳では無いけれども、一般的なプログレメタル勢と比べれば演奏はシンプルです。
にもかかわらず、曲の構成やちょっとした小物使いなど、豊富な発想で実に面白く変態的な作品へと昇華させています。
演奏はシンプルなのにプログレッシブで変態というのが、僕にとっては凄く新鮮だったんです。
「ああ、別に演奏が高度じゃなくてもいいんだ」と。
#8″冷血なりせば”。激しいデスメタルから一転、民族楽器を用いた神秘的な静寂へ。
そして最後。
2つ目と少し被りますが、この掴み所がない気味の悪い雰囲気。
今作は、ちょっとしたアレンジや小物使いで雰囲気を作り出すのが本当に上手いと思います。
今作は全体に東洋的な情緒を漂わせていますが、そうした空気は、さりげない所で出てくる尺八(?)などの楽器や微かなアレンジなど、必要最低限の演出によってもたらされています。
夏の夕暮れを思わせるそうした東洋的・日本的な空気は美しさを帯びていると同時に、どこか不気味。
そして京の無形の声と楽曲の多様性がそこに加わることで、
どこか掴み所がなく、まるで蛇のような薄気味悪い雰囲気を作品全体に纏わせているように思います。
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